花冠 (殺生丸語りです)いまだに、わからぬまま。 なぜこのようなところに、こんな小娘といる? しかも、“人間”の小娘とともに・・・。 別段気に入ったわけではないだろう。 ただの、命の恩人・・・程度の存在のはずだ。 ・・・助けてくれ、などと言った覚えはないが。 むしろ人間など、すぐに攻撃を仕掛けてくる存在。 邪魔だったはず。 居なければいいものを、と。 犬夜叉にしてみてもそうだ。 半分もの血が人間で構成されている。 そのせいで、父上や私のように能力が発揮できない。 何事にも劣る、無力な。 私もよく馬鹿にしたものだった。 大体、なぜ今更己を弱くした人間などとつるむのか。 理解できぬ。 そう、今も・・・。 ならばなぜこの娘を助けたのだろうか。 分からない。 何の気なしに、とでもいうか。 動きにくくなるだけの小娘。 今この瞬間でも、仕留める事は出来る―――!! なのに、手が動かぬ。 意に反するように。 きっと、犬夜叉に切り落とされた腕の傷が、この手にも響いているのだ、とかってに決めつける。 ―――リン。 なぜ、名前で呼ぶのだろう。 忌まわしいほどの存在のはずなのに。 人間だというのに、なぜ・・・・・・。 「殺生丸さまっ」 甲高い声で呼ばれ、はっと我に返る。 気付くと、頭の上に何かが置いてある。 ・・・・・・花冠。 「何だ、これは」 リンは、臆した様子もなく笑っていった。 「花冠です!邪険さまとつくったの!!」 よく見ると、リンの頭と、邪険の首にも、同じものがある。 リンが、にっこりと、うれしそうに笑う。 私を相手に。 人間なのに、なぜ。 邪険をにらむと、悲鳴を上げいきなり謝りはじめた。 「も、もも、申し訳ありませんッッ!!リンが、あまりに煩かったものですから、つい・・・。こ、これ!リンも謝らんかッ!!!」 すっかり怯えた様子で、いつものように慌てているが、リンの方は平然としている。 これではどちらが妖怪なのか分からぬではないか。 「構わん・・・・・・」 意識もせず、ふっと口から漏れた。 自分でも驚くほどに、自然に。 笑うことこそしなかったが、さして嫌な訳ではなかった。 もうしばらくは、ここに居よう。 花冠に使われたのと同じ花が咲き乱れるこの場所に。 謎は解けぬであろう。 しばらくは、なのか、ずっとなのかは分からないが。 だが、今はあまり気にならない。 この人間の娘が居ることに、不快感を感じないのだから・・・・・・。 |