022543 ランダム
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見習い魔術師

見習い魔術師

花冠       (殺生丸語りです)



いまだに、わからぬまま。
なぜこのようなところに、こんな小娘といる?
しかも、“人間”の小娘とともに・・・。
別段気に入ったわけではないだろう。
ただの、命の恩人・・・程度の存在のはずだ。
・・・助けてくれ、などと言った覚えはないが。
むしろ人間など、すぐに攻撃を仕掛けてくる存在。
邪魔だったはず。
居なければいいものを、と。
犬夜叉にしてみてもそうだ。
半分もの血が人間で構成されている。
そのせいで、父上や私のように能力が発揮できない。
何事にも劣る、無力な。
私もよく馬鹿にしたものだった。
大体、なぜ今更己を弱くした人間などとつるむのか。
理解できぬ。
そう、今も・・・。
ならばなぜこの娘を助けたのだろうか。
分からない。
何の気なしに、とでもいうか。
動きにくくなるだけの小娘。
今この瞬間でも、仕留める事は出来る―――!!
なのに、手が動かぬ。
意に反するように。
きっと、犬夜叉に切り落とされた腕の傷が、この手にも響いているのだ、とかってに決めつける。
―――リン。
なぜ、名前で呼ぶのだろう。
忌まわしいほどの存在のはずなのに。
人間だというのに、なぜ・・・・・・。

「殺生丸さまっ」

甲高い声で呼ばれ、はっと我に返る。
気付くと、頭の上に何かが置いてある。
・・・・・・花冠。

「何だ、これは」

リンは、臆した様子もなく笑っていった。

「花冠です!邪険さまとつくったの!!」

よく見ると、リンの頭と、邪険の首にも、同じものがある。
リンが、にっこりと、うれしそうに笑う。
私を相手に。
人間なのに、なぜ。

邪険をにらむと、悲鳴を上げいきなり謝りはじめた。

「も、もも、申し訳ありませんッッ!!リンが、あまりに煩かったものですから、つい・・・。こ、これ!リンも謝らんかッ!!!」

すっかり怯えた様子で、いつものように慌てているが、リンの方は平然としている。
これではどちらが妖怪なのか分からぬではないか。

「構わん・・・・・・」

意識もせず、ふっと口から漏れた。
自分でも驚くほどに、自然に。
笑うことこそしなかったが、さして嫌な訳ではなかった。

もうしばらくは、ここに居よう。
花冠に使われたのと同じ花が咲き乱れるこの場所に。
謎は解けぬであろう。
しばらくは、なのか、ずっとなのかは分からないが。
だが、今はあまり気にならない。
この人間の娘が居ることに、不快感を感じないのだから・・・・・・。



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